小説家になるには?
夢を追いかけている人のためのブログです 小説の創作方法や文章の書き方などを考えていきます
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小説家になるには、文学も嗜まねばならないでしょう。
という訳で、中島敦の『山月記』を読みました。
普段は一度読んだら、それっきりという乱読ばかりしてますが、『山月記』は精読しています。
李徴は高学歴のエリートですが、詩家として名を残そうと現在の一流の職を辞め、詩作に耽るが上手くいきません。
生活が苦しくなり、再び職に就くことになりりますが、見下していた同輩の下で働くことに、自尊心をひどく傷つけらます。
詩家になれず、気が狂い、身を虎へと変貌させたのです。
物語は、虎となった李徴が、友人の袁傪に偶然再会し、自身の経緯を語り、虎となった理由を語るのが主となっています。
作家を目指す私には、非常に感じる部分の多い作品でした。また、短編のためか、文学にしては、比較的分かりやすい内容でした。
「この作品、結局何が言いたいの?」という本もありますが、『山月記』は李徴の言葉を追えば、分かっちゃいますから。
『山月記』を語る時、「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」という単語があります。
しかし、小難しい言葉を使わなくても、次の一文で非常によく作品の内容を表せていると思います。
人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短いなどと口先ばかりの警句を弄しながら、事実は、才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と、刻苦を厭う怠惰とが己の凡てだったのだ。
前半部分だけを切り取って、名言集に書かれたりしたのを見ました。
しかし、私はこの一文のすべてが好きです。
自分にも当てはまる部分がある言葉です。しっかりと心に刻んで、おきたいですね。
ライトノベルでは、よく最初にカラーの挿絵があります。
キャラクターのイメージを掴むのに役立つのです。しかし、ものによっては完全にネタバレになっている挿絵もあったりして、どうにかならないかと思います。
『雨の日のアイリス』では、効果的でした。序盤は、アイリスのほのぼのとした日常が描かれるのですが、ここだけでは少し退屈です。ロボットと人が暮らす未来の世界を描いているので、世界観に興味が惹かれますが、やや平和過ぎて、事件が起こらない。それも、後半とのギャップがあって、必要なものだと読めば分かります。きっと、始めの挿絵がなければ、投げていたかもしれません。
なぜ、家政婦ロボットが工事現場で働く二体のロボットに出会うのか。やはり、謎は物語を読み進める大きな原動力になりますね。
一章で七日間、二章で八十三日、三章で三日くらいが、物語の中で主人公のアイリスが体験します。
やはり、三日より、三か月の出来事の方が重みがあるような気がします。小説の書き方のハウツー本では、分量によって作中の時間も言及されている場合もあります。確かに、最後に取って付けたように、時間が百年流れて、変な解説されるよりは、すぱっと終わった方がいいでしょう。しかし、やたらめったらにハウツー本を信じて、2週間くらいで終わる話を書くと、話も小じんまりとするような気がします。シーン毎に細かく描写するのも大事ですが、必要があれば、一気に時間が飛んでも、話に厚みが増すのではないでしょうか。
最近、新しい本に挑戦しています。
今までは、書店で適当にタイトルを見て買ったりしてました。中身を全く開かず、あらすじも読まずで買って、失敗した経験も多いです。
今回は、アマゾンの星を参考に買ってみました。レビューの数がある程度あって、星が五つだったら、内容も確認せずに買いました。案外上手くいってます。
『雨の日のアイリス』 著:松山剛
ゾンビが登場する映画は、ゾンビ映画というジャンルとして確立している。
しかし、小説になると、思い浮かばない。少なくとも私は知らなかった。
『オブザデッド・マニアックス』は、ゾンビ小説になる。
主人公は取り柄のない高校生で、根暗でクラスでも孤立している少年だ。
突然、パンデミックに遭い、ゾンビに襲われる状況に陥る。主人公は取り柄はないが、ゾンビ映画をこよなく愛するマニアで、自分がゾンビに襲われる状況を常に妄想していたのだ。
主人公が大活躍して、ゾンビを次々と薙ぎ倒していく展開なのかと思えば、まったく違う。
ショッピングモールに逃げ込んだ主人公は、衝撃を受ける。クラスメイトが全員無事に生存しているのだ。しかも、主人公の想い人である委員長が、クラスを完全に掌握し、完璧なゾンビ対策を構築していたのである。
委員長は、主人公に負けず劣らずのゾンビマニアで、ゾンビが襲われたときの対策をノートにびっしりと書いていたほどなのだ。
一見、秩序のあるように見えるが、主人公は違和感を覚えるのであった。
正直、読んでいて辛かった。
リアルなのである。主人公のゾンビ知識が挿入され、作品に存在感や説得力があるのだ。それに、ゾンビは走らず、のろのろとして、音に反応するような頭の悪い奴なので、高校生が対抗できるのも納得できる。
この作品では、ゾンビより、極限状態で委員長が構築した独裁の方が不気味で恐ろしい。
ゾンビというファンタジーの存在がいるにも関わらず、どこまでもあり得そうだと思わせる見事な作品だった。
今年一番の小説だ、と思って「読書記録ノート」を開いたら、今年に入って70冊ちょっとしか読めてなかった。
とにかく、おすすめの一冊です。
『オブザデッド・マニアックス』 著:大樹連司